ねがわくは 花のもとにて 春死なむ

ねがわくは 花のもとにて 春死なむ I wish I would die under a cherry tree in full bloom.

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クルーズ・ツアーの初日、デッキでの昼食を楽しんだ後、チャンパーサックの町に上陸し、バスに乗ってワット・プーの寺院遺跡群を訪問しました。2001年に、世界文化遺産に登録された遺跡群です。言い忘れましたが、今回のクルーズの参加者は、イタリア人が10人、フランス人が5人、そして、我々日本人3人です。船会社では、常時、英語とフランス語のガイドを用意しています。
さて、チャンパーサックは、18世紀初めに独立したチャンパーサック王国の“首都”でした。しかし、日本人からみたら、緑多い、鄙びて可愛らしい田舎です。そんな町の風景をバスの窓外に眺めながら、15分ほどで寺院遺跡群に到着しました。

 

ワット・プー寺院の現在残る建物群は、11世紀に、クメール人によって、ヒンドゥー教の寺院として建てられたそうです。クメール人が、アンコール・ワット、アンコール・トムを建設した12世紀よりも前のことです。その後、ワット・プーは上座部仏教の寺院として改修されました。口の悪い人は、「ワット・プーなんて、アンコール遺跡群に較べたら、貧しいもんだ」と、言います。しかし、貧しい分だけ、観光客の姿も少ないので、静けさが敷地内を支配しています。

 

寺院群の入り口から、左右に奥に向かって長く伸びる聖なる池と、その真ん中を参道が貫きます。そして、参道の両側には、石造りのリンガが並んでいます。最初に出会う建物は、参道の左右に建つ“宮殿”です。建物の姿は、数百年の風雨に耐えてきたことを、訪問者によく伝えてきます。さらに進むと、自然石を積み上げて造られた急な階段があります。私のような高所恐怖症の人間が昇ることをためらわせるに十分な勾配です。そして、この階段の両側に、古びたチャンパーの花の木が幾本も植わって、本堂に続いているのです。乾季のこの時期は、チャンパーの花が今を盛りと咲いていました。訪れた人は、この花のトンネルに入る時、まるで、クメール人がこの寺院群を建設した中世の時代に入り込んでゆくような気分に浸ることができるのです。

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12世紀に、西行法師が詠んだ歌を思い出しました。
ねがはくは 花のもとにて 春死なむ その如月の 望月のころ(『新古今集』)
西行が詠んだ季節は、旧暦二月でした。このクルーズの旅は、新暦の二月ですが、日本の昔に詠まれた歌に、ラオスの旧都で出会うとは。

 

この、花のトンネルが、雨季の夏場になると、緑一色に変わるのです。山腹から眺め下ろした遺跡の風景の、乾季と雨季の違いを、写真で確認願います。
階段を登り切ると、山腹に建てられた本堂の建物がありました。壁面に彫られた、舞うアプサラ(天女)達も、チャンパーの木の季節による変わり様を楽しんでいるかのようでした。

 

地元の男の子がふたり、参道の壁跡のような石の上に坐り込んで、拾い上げたチャンパーの花をしげしげと眺めていたのも、なんだか不思議な光景でした。

 

ラオス情報文化観光省 日本語公式フェイスブック「LaosSimplybBeautifulJ」より転載